情報データ科学の「いま」がかわる!!プロのコトバ ~INTERVIEW~

槇俊孝(マキトシタカ)さん

やりたいことを追求出来る研究員としての魅力

槇 俊孝(マキ トシタカ)さん

【会社名】 日本電信電話株式会社(NTT)
【所属部署名・役職】 コンピュータ&データサイエンス研究所・研究員
【入社年】 2018年
【略歴】

学生時代は、情報工学部で情報通信分野を専攻し、博士後期課程(知能情報システム工学専攻)を修了。

大学では、オープンデータの知識構造化に関する研究テーマに取り組む。特に大学院では現職の入社のきっかけとなるデータ分析を学び、興味を持つ。

卒業後は日本電信電話株式会社に入社。入社面談で「データ分析の仕事がしたい」と伝え、希望通りデータ分析自動化に関する研究開発に従事。機械学習の自動化やデータ可視化の自動化に関する研究を約2年間行う。

それらの研究内容を現場に適用し、営業や人事などのドメイン特化で課題解決に資する技術創出に従事し、現在ではスマートグリッド(次世代送電網)の実現に向けて研究開発を行う。

インタビュー
大企業の研究所で働く魅力とは?

現在の仕事について

日本電信電話株式会社(NTT)槇さん

NTT研究所の紹介

NTTグループでは、移動通信事業や地域通信事業をはじめ、様々な事業を展開しています。 NTT研究所は、それらの事業で将来的に必要となる先端技術を研究開発しており、領域別に4つの総合研究所があります。

私が思うNTTグループの良さは、地元に根付いた多種多様なサービスを提供していること。

NTTグループでは、これまでの通信インフラ事業やICTサービス事業だけでなく、次世代の電力事業にも力を入れており、再生可能エネルギーの有効活用による環境負荷の低減や自然災害などのリスクに強い、安心・安全な社会の実現に取り組んでいます。

▼ NTTが電力をやる意義とは?

NTTが電力をやる意義は、既に色々なアセットを保有していることが大きいです。

例えば、NTTの通信ビルには非常用電源の蓄電池が設置されています。
現在、太陽光発電が主流になりつつありますが、天候の影響を受けるため計画通りに供給できないことがあります。そこで蓄電池を活用し、安定的に電力を供給できるようにすることなどを目指しています。

我々は新たな設備やノウハウを一から作り上げて事業に参入するのではなく、これまでに培って構築されたものを高度に利活用していく。事業としては新規だが、設備やノウハウとしてはNTTが今まで培ってきたものを活用していくことが意義であり、大きな強みでもあります。

NTT研究所に入社した理由

私がNTT研究所を選択した理由は3つあります。

  • 1. 情報通信分野において国内最大規模の研究所であること。
  • 2. 情報通信をはじめ様々な技術分野の研究者が所属していること。
  • 3. 創出した技術がNTTグループ会社を通じて広く展開されること。

大学とは異なり、色々な人の力を借りながら、自分の研究を大きく発展させ、その成果が社会の価値を変えていけることに魅力を感じ入社しました。

NTT研究所は、NTT持株会社の中にある一組織であり、NTTグループ全体に関わる大規模な研究所です。研究所内だけでなく、サービス提供者とチームを組み、共に研究できるところも大きな魅力です。

現在の仕事と役割

▼ 仕事

スマートグリッドに関する研究開発を推進しています。具体的には、データサイエンスに基づいた様々な予測システムを研究し、高度な電力需給マネジメントを目指しています。

今取り組んでいる仕事は、電力の安定供給や地産地消にむけて、データ分析に基づいて必要なアルゴリズムを構築しています。

電力需給マネジメント
▼ 役割

プロジェクトリーダとして課題抽出や技術検討、ロードマップ立案などを担当しています。
協力会社との調整や課題の洗い出し、解決方法の検討など、全体のロードマップを考え進めています。

チームの構成は、事業会社メンバも含めると数十名規模となります。研究の最先端としてチーム一丸となって、日々研究開発を行なっています。

▼ 仕事に必要な知識・スキル

チームワークの能力が非常に大切です。

仕事は自分ひとりでは進められません。また研究所にたくさんの専門家がいても目標達成が難しいことがあります。それは実際にビジネスをしている人に納得してもらわないと技術を使うハードルは上がり、使ってもらえないことがあるからです。

その技術をどうやって作って、いつまでにビジネス展開するのか、最初から最後まで考えられる計画力が非常に大切です。
最低限の知識はもちろん必要ですが、単純に数学の知識が優れているよりも、いかに効率良く分析できるかが重要だと思っています。

データ分析は時間に制限がなければいくらでも何かしらの結果がでますが、いかに目標に向かい効率的に分析できるかという視点が必要です。目標に向かい、サブの目的を1つ1つ達成していくことが重要だと言えます。

技術としては、分析スキル(統計分析、機械学習)をはじめ、電力システムなどのドメイン知識を必要とします。他にも、協力会社との基本方針の立案と合意や、作業委託のためのタスク分割や進捗管理などのスキルも必要ですね。

大前提として、データ分析はデータが無いことには始まらないので、協力会社にデータ提供を依頼するために、課題を明確化し、課題解決に資する技術や方法論を提案するための論理的で柔軟な思考と、人を巻き込むバイタリティも重要です。

▼ ドメイン知識を身につけるタイミングは?

自分も学部生の頃は、学生のうちに希望業界の知識をつけなければいけないのかと不安に感じていましたが、やると決まった時から勉強していくというスタイルで問題ありません。

研究開発のスパンはだいたい2年、長くても5年のスパンで色々な研究テーマを行なっています。なので、必要な時に必要な知識を得ていくという形にならざるを得ません。専門性という観点でも柔軟性が必要です。

もちろん大学の時に勉強できるのであれば、できることにこしたことはありませんが、会社の方針は色々変わることもあるので、必要な時に必要な知識を得て行くスタンスでOKです。

▼ 仕事に対する考え(想いやこだわり)

技術を通じて社会貢献するためには、チームワークが何よりも重要と考えています。

例えば、データ分析でスマートグリッドを実現する場合においても、分析スキルを持っているだけでは目標を達成できず、付け焼刃で電力システムの知識を身に付けても目標を達成できません。

専門家が優れた技術を開発しても、現場目線で見た時にこれまでのやり方を大きく変えることになりかねません。そうするとなかなか現場に適応できない。だから技術の専門家がたくさんいても上手くいかないのです。

このように、目標を達成する(使われる技術を創出する)には、課題やビジネス適用の方針などを議論し、共に目標達成のためのロジックを組み立てていく必要があります。

よって、小売電気事業者や発電事業者などの関係者とのチームワークが不可欠と言えます。

▼ チームワークが重要とのことですが、現場でのコミュニケーションは?

基本リモートでコミュニケーションを取っており、業務上全く問題なく、むしろ生産性高く仕事ができています。リモートだからこそ気軽に打ち合わせができ、柔軟に時間を設定できるのがとても良いですね。

離れていながら、常にメンバと一緒に仕事をしている感覚です。

また、プライベートとも両立しやすく、ライフワークバランスがより整ったと実感しています。

情報データ科学部生にオススメする学びとは?

PBL(Project Based Learning)は、とても重要な科目だと思います。
技術的な知識を身に付けただけでは、必要とされる技術を創出することは困難です。

たとえ目標とする技術を創出できたとしても、使われない技術になる可能性は大いにあります。使われる技術を創出するには、関係者との事細かな調整やビジネス適用に関する理解を得る必要があります。

PBLは、座学だけでは難しい上記の経験を積むことができるので受講することをお勧めします。

先ほどお話した、柔軟に現場の人とコミュニケーションをとる視点では、自分もそうでしたが、学生の時は自分ひとりで最初から最後まで全てを考えて手を動かさなければいけないという意識でした。
この科目では自分一人だけでなく、みんなで共創しながら仕事を進めるという経験を積めるので、企業に入った時に非常に役立ちます。

実際に働く上で、本当にいい技術を作るためには、協力し合うことが大切だと思っています。

NTT研究所に興味を持った方はぜひお話ししましょう。

NTT研究所では、情報データ科学についても基礎研究から応用研究、そして商用開発まで幅広く研究開発を行っています。

昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)やデータドリブン経営などが脚光を浴びていますが、NTT研究所でもそれらをテーマにした様々な研究プロジェクトが立ち上がっています。

やりたいことが必ず見つかると思いますので、興味のある方はぜひ一度お話しを聞きに来ていただければと思います。

(インタビュー日:2021年12月03日)