情報データ科学の「いま」がかわる!!プロのコトバ ~INTERVIEW~

AIや機械学習を武器に企業の課題を解決するコンサルタント

高橋 柊(タカハシ シュウ)さん

【会社名】 SAS Institute Japan株式会社
【所属部署名・役職】 Leader Analytical Consultant, ML & AI Innovation Team, Advanced Analytics & AI Innovation Group
【入社年】 2018年
【略歴】

学生時代は情報系の学部・研究科に在籍。Twitter特有の短いテキストを要約する技術を活用し、マーケティングに活用できそうなツイートや、それらのセグメンテーションを分析する研究など、自然言語処理に関する研究テーマに取り組む。

2015年に修士課程を修了した後に大手通信企業に入社し、研究所でビッグデータ解析やレコメンデーションエンジンの研究開発に従事。

希少性や影響力に着目したソーシャルメディアでの犯罪関連投稿の抽出により潜在的に犯罪が起こりそうな地域を予測する研究や、災害時におけるWi-Fi使用状況をTwitterのデータを活用し監視する研究。生体センサーから取得したデータを用いて不整脈検知を行う技術など、さまざまな研究開発を行う。

その後、2018年にSAS Institute Japan株式会社に転職。Analytical Consultantとしてお客様の経営課題を機械学習・AIで解決するコンサルティングサービスを行う。

学会活動にも参加しており、情報処理学会のCDS研究会運営メンバーとして活躍。

インタビュー
お客様の経営課題を機械学習・AIの技術で解決する

現在の仕事について

SAS Institute Japan株式会社 高橋さん

SAS Institute Japan株式会社の紹介

SAS Institute Japan(以下、SAS)は、企業の経営課題解決を支援するアナリティクス・ソフトウェアとサービスのリーディング・カンパニーです。簡単に言うと、データ分析のためのソフトウェアとコンサルティングサービスの提供を行っている会社です。

学生の皆さんには馴染みがない会社かもしれませんが、歴史は古く1976年に創業して以来、40 年以上連続した成長を続けており、全世界で147ヶ国約83,000 サイトでSASが採用されています。

SASは、高度な分析と将来予測を実現するフレームワークにもとづき、革新的なソリューションを提供し、複雑な経営課題を解決するビジネス・ソリューションによって迅速で正確な意思決定を実現することで、顧客のパフォーマンス向上と価値の創出を支援しています。

入社した理由

SASに入社した理由は2つあります。

1つめはSASがアナリティクスのリーディング・カンパニーとしてグローバル市場をけん引している存在であることです。

そのためSASにはさまざまなバックグラウンド、経験、視点が混ざった多次元的な文化があり、イノベーティブな環境で仕事に取り組めると考えました。実際にグローバルな人材が多く、幅広い協力が得られています。

2つめは、様々な業態の多種多様なデータを分析できるという点です。多様なデータを分析することは、多様なアルゴリズムに触れることにつながります。多種多様なお客様と接点を持ち仕事でき、各業界の知識を得ることができることにも魅力を感じました。

事業会社に入社し特定ドメインのデータを深堀することも興味深いですが、このような環境で仕事をすることがスキルアップにつながると考えています。

現在の仕事と役割

▼ 役割

私の役割はAnalytical Consultantとして、お客様にAIおよび機械学習を活用した経営課題解決のコンサルティングサービスを提供することです。

お客様の経営課題に対して、AIおよび機械学習に関する技術的なバックグラウンドを生かして解決手法を提案および実装・提供しています。

高度な技術力が求められるだけでなく、業務フローの分析、課題設定や効果検証など幅広く支援しています。プロジェクトチームの規模としては、案件によりますが数人〜数十人ほど。数十人規模のプロジェクトの場合、アナリスト以外にもソフトウェアエンジニアなどがアサインされることが多いです。

サービスを提供するお客様の業態は多岐に渡り、私自身SASに入社してから製造・金融・医療・保険・ライフサイエンス・運輸など様々なお客様の経営課題をアナリティクスにより支援してきました。プロジェクトでは具体的な課題が明確に定義されていることもあれば、そうでない場合もあります。具体的な課題が定義されていない場合には、お客様と一緒に業務フローを整理し、As-is・To-beを明確化したうえで、測定可能なアナリティクスの価値が最大化されるような課題設計が必要です。実際のプロジェクトではデータを使って分析している時間よりも、このようなビジネス理解や課題設計に多くの時間と労力が必要となります。

当然ながら、アナリティクスの価値を最大化するためには最新の分析手法に関する理解が必要とされます。私の所属するML & AI Innovation Teamでは、高度なアルゴリズムが必要とされる課題の解決がミッションとなっています。そのため、お客様へのコンサルティングサービスと並行して、最新研究のサーベイや社内共有なども重要な業務です。SASには国や部門を超えたデータ分析者のコミュニティが存在し、最新研究の輪講や世界中の分析事例の共有が活発に実施されています。私自身も日本における分析者コミュニティの幹事として毎週末ランチの時間に行われる輪講や事例紹介に参加しており、最新情報のキャッチアップができるよう努めています。プロジェクトにおける分析手法のアイデアの多くは、このようなサーベイ活動や社内事例を通して得た知識がベースとなっています。

▼ 仕事に必要な知識・スキル

データサイエンスの知識・技術をベースとし、お客様の業務やフローを理解すること、お客様の隠れた要望をも掘り起こすことなど、コミュニケーションスキルが必要とされます。

  • ・お客様の必要とする要求をヒアリングし、その結果に対して魅力的なアナリティクスソリューションを設計し測定可能な価値を提供するスキル
  • ・問題の定義・データの収集・分析モデルの構築と提案を行う分析スキル
  • ・最先端の統計・機械学習手法を活用または開発することで、大規模なデータに対してスケーラブルかつ統計的に厳密なソリューションを構築するスキル
  • ・データ駆動型の最適化モデル・予測アルゴリズム・機械学習モデルをSASおよびPython・Rなどのテクノロジーを活用して効率的に構築・維持するスキル

上記が、私が思う仕事に必要な4つのスキルです。

▼ 仕事に対する考え(想いやこだわり)

私は探求心というシンプルな人間の欲求に忠実であることに日々心掛けています。

自分の周りのことをより知りたいというシンプルな人間の欲求が、ビジネスにおいても課題解決への大きな原動力となると考えているからです。

仕事を進めていく中で、自分は疑問を持っているが誰も疑問を持っていない前提に出会うことが多々あります。

そのような場面において、前提を疑う事を恐れず、探求心をもって分析に取り組むようにしています。そのような姿勢が、問題の本質的な理解につながり、思ってもいなかった解決策を生むことがあると考えているからです。

情報データ科学部生にオススメする学びとは?

大学での勉強が社会に出て役に立たないという話をよく聞きますが、データ分析者という専門的職業においては、驚くほど役立つと感じています。

実際に、私は現在でも仕事を進める中で学生時代の教科書を開くことが月に1度はあります。私の業務と関連する科目についていえば、「パターン認識と機械学習」および「人工知能」の2つは特に重要です。

現在使われている機械学習アルゴリズムの多くは、この科目を履修することで理解できるのではないでしょうか。また、まだ広く使われていない最新研究で提案されているアルゴリズムもまた、この2つの科目を勉強することで読み解くことができるようになると思います。

これらの科目を理解するうえでの基礎力を構築するという意味では、基礎数学もまた重要な科目であるといえます。

学生へのメッセージ

SASでは学生の皆さんに極めて需要の高いアナリティクスのスキルを身につけ、自分自身を差別化するためのSAS Academic Programsを提供しています。

無償のソフトウェアとその使い方を学習するためのリソースはもちろんのこと、皆様の能力を発表し、人脈を築き、将来への扉を開くことができる幅広い機会をご提供しています。詳しくはHPをご覧ください。

https://www.sas.com/ja_jp/learn/academic-programs.html

(インタビュー日:2021年12月20日)