情報データ科学の「いま」がかわる!!プロのコトバ ~INTERVIEW~

地図で培った経路探索技術を活かし社会課題を解決するソーリューションビルダー

秋元 大地(アキモト ダイチ)さん

【会社名】 株式会社 ゼンリン
【所属部署名・役職】 IoT事業推進部 ドローン推進課
【入社年】 2010年
【略歴】

学生時代は、工学部で情報システム工学を、修士では電気情報工学を専攻。FPGA(現場で書き換え可能な論理回路の多数配列)を用いたリアルタイムな画像処理をテーマに研究を行う。

卒業後は、株式会社ゼンリンに入社。自動車/歩行者用経路探索からドローン向け三次元経路探索の研究開発まで様々な開発に従事。

【1年目~3年目】:開発部門(北九州)
・自動車/歩行者用経路探索システムの開発
・海外カーナビ向けデータフォーマットの開発
・社内向け検証用ツールの開発

【4年目~11年目】
・地図表示アプリケーションの研究開発
・ドローン向け三次元経路探索の研究開発
・量子コンピュータの調査/検討

【12年目以上】
・IoTを活用し地域/企業の課題解決ソリューションの提案

インタビュー
ドローンを活用した空飛ぶ配送サービス!歩行者用地図にとどまらないゼンリンの経路探索とは

現在の仕事について

株式会社ゼンリンの紹介

株式会社ゼンリンは、住宅地図、カーナビゲーション用の地図、自動運転用の地図、GIS(地理情報システム)・マーケティング用の地図等、様々な地図情報を用いた商品・サービスをご提供しています。

新入社員時代の仕事

現在の仕事をご紹介する前に、入社してすぐに、どんな仕事をしていたのか、先に紹介させてください。研修が充実しており、若手ながら早いうちから主要な開発に参画できる魅力を知ってもらえればと思います。

私は、入社後ナビゲーションシステムの開発を行う部署に配属されました。

最初の1年目は、既存のシステムを理解するために、ソースコードを確認するなど、今後の業務遂行に必要なスキルや知識を学ぶための研修期間です。ナビゲーションを扱う中で、基礎的なプログラムの研修や、アルゴリズムの中身を学びました。同時に、上司や先輩の実務のサポートをすることを通して、地図データの扱いなど業務上必要な知識を得ていきます。

2年目は、ケータイ向けの歩行者ナビゲーションシステム「いつもNAVI」(https://www.its-mo.com/)の開発に従事。開発チームは3名で、ナビゲーションのエンジンの設計、実装、テストまで一貫して担当。駅構内など、建物内の詳細なナビゲーションを行う新機能を追加するための開発を行いました。

ナビゲーションを実現するためのコア技術は、目的地までの経路をいかに探索するかがポイントです。単純に通路とか道路をつなげていくだけではなく、歩行者が通ることができるのかなど、付随する情報を活用するかが非常に重要と言えます。

経路探索には、基本的にダイクストラ法(※)というアルゴリズム用いて実現します。経路探索にこれを当てはめると、目的地までの経路パターンは非常に多く存在しますが、時間や距離などのコストが最小になる経路を炙りだすことができます。

時間や距離だけではなく、何をもってコストとするかが工夫のしどころで、道路幅、傾斜、料金がかかるか等、ナビゲーションの利用者にとって、現実世界には様々なコストが存在します。今でも、新たなデータを経路探索に活かしていくことは大事だと思っています。

このように、入社後は業務を通して基礎をしっかり学び、2年目以降はその知識を活かしバリバリ開発に参画できる体制が整っています。

※グラフ上のある地点を始点とする最短経路を求める(単一始点最短経路問題を解く)ためのアルゴリズム

現在の仕事と役割

現在はIoT事業推進部ドローン推進課にて、IoTを活用して、地域や企業が持つ課題のソリューションを提案しており、地図×移動×●●(地域課題に則した技術)をいかに組み合わせて課題を解決できるかを考えています。

また、チームリーダーとして、メンバーの進捗管理等も行いつつ、開発系出身ということもあり、技術分野でメンバーを引っ張っています。

直近の業務ではありませんが、ドローンのための地図作成の仕事も行なっていました。

前述でお話しした歩行者用などの2次元の経路探索のノウハウを生かし、空飛ぶドローンの3次元経路探索とそれに関連するサービスの実現に取り組みました。

具体的には、ドローンを活用した荷物配送を実現するためのシステムを構築し、長野県伊那市で実装実験を行いました。詳しくは以下をご覧ください。

参考:自治体運営による長距離ドローン配送サービスを高精度な3D地図により実現
https://www.zenrin.co.jp/information/product/211116.html

今までの地図作成と大きく異なる点は、車や歩行者が地上を移動するときに用いる地図とは違い、ドローンは空を飛べるからこそ、新たな道を定義する必要がありました。そのため、地図は3次元の空間を表現するデータになります。

加えて、障害物、落下などトラブル時の安全性、三次元経路探索に必要なコストも考慮しながら、高さ約50〜60m、最長10kmの距離を配送することが可能なサービスが実現しました。

このように、IoTとデータサイエンスを活用して、社会課題の解決を行う研究開発を行なっています。

他にもドローンにまつわる色々な事業やサービスを展開しているのでご覧ください。
https://www.zenrin.co.jp/product/category/technology/drone/index.html

▼ 仕事に必要な知識・スキル

様々な知識・スキルが必要だと思うが、「自分で答えを出す力」が重要だと感じています。

学生時代は答えがあることが多いですが、仕事を行う上では、答えがあることは少なく、自分で考えていく必要があります。

その時に、仮説でも良いので、自分自身で考え、仕事を行うことができることが大きな力になるかと思います。

▼ 仕事に対する考え(想いやこだわり)

仕事を行う上で心がけていることは、「理想の姿」を持つことです。

これは、自分自身という訳ではなく、お客様の課題を解決した姿はどういったものになるべきか、といったことも含みます。

理想像を明確にすることで、現在とのギャップが分かり、そのギャップを埋めるための施策につながり、最終的に目標を達成できると思っています。

情報データ科学部生にオススメする学びとは?

プログラミング演習が必要かと思います。

昨今、AI、クラウド、5Gといった様々な技術が出てきており、開発部門だけでなく、営業部門でも技術を知っている必要があります。

プログラミングは、それらの技術を知るための「必要不可欠」な要素ではありませんが、技術を理解しやすくなる一つのツールになります。

また、1つの言語を修得することで、他の言語への応用も効きますので、何か一つの言語を修得しておくことで、将来的に役立つと思っています。


私の場合は、プログラミングが役立つ機会が多く必要だと感じましたが、それは、就職する企業によって変わるかと思っています。

働く期間は、これまでの学生期間よりも長い時間を費やすことになりますので、将来就職したい企業を視野にいれて、それに必要となる知識を、他の分野よりも少し多く取り入れることをおすすめします。

(インタビュー日:2022年1月13日)