情報データ科学の「いま」がかわる!!プロのコトバ ~INTERVIEW~

AIで地図情報をもっと充実に「ゼンリンしかできない」を加速させる技術者

小田原 圭吾(オダハラ ケイゴ)さん

【会社名】 株式会社ゼンリン
【所属部署名・役職】 研究開発室 地図先進技術担当 長崎R&Dブランチ
【入社年】 2015年4月入社(7年目)
【略歴】

・学生時代に所属していた学部・学科で専攻していた分野:
情報工学部を卒業。
光学系の研究室で、ホログラフィックメモリ(※)の研究を行う。

※ホログラフィックメモリとは、光学的にデータを記憶する媒体のひとつ。CDやDVDの次なる媒体であり容量が大きく高速。

・これまで従事してきた仕事:
2015年4月にゼンリン入社。研究開発室に配属され、3D高精度地図データ(AD:自動運転/ADAS:先進運転支援システム向けの地図)の仕様設計や顧客調整を担当。(社内の地図制作部門、社外カーメーカーとの仕様調整を担当し、国内/国外出張も経験)

入社3年目の後半からは、3D高精度地図データの実用化に向け、東京の部署(事業系)との交流が多くなり、4年目からは東京本社に異動し、より顧客に対して近い立ち位置で、地図の仕様調整や仕様説明などの業務を担当。

その後、3D高精度地図データの実用化が見込まれたタイミングで北九州市の本社に戻り、新たな業務として「AIを用いた地図作りの自動化研究」を開始。

翌年、ゼンリンとして初の産学官連携の研究拠点である「長崎R&Dブランチ※」の開設に伴い、初期メンバーとして長崎市への異動を自ら決意。現在は、AI研究に加え、産学連携業務(共同研究、インターンシップ、企業説明会への参加など)を担当。

※R&D:Research and Developmentの略称

インタビュー
AIで道路上の文字情報を抽出し地図情報を高度化!海の見えるゼンリン研究機関「長崎R&Dブランチ」

現在の仕事について

株式会社ゼンリンの紹介

ゼンリンは、住宅地図、カーナビゲーション用の地図、自動運転用の地図、GIS(地理情報システム)・マーケティング用の地図等、様々な地図情報を用いた商品・サービスをご提供しています。

ちなみに、社名のゼンリン(善隣)は隣人と仲良くなることを意味しており、平和でなければ地図作りはできないという思いが込められています。

私が所属している長崎R&Dブランチは2020年4月に新設された研究拠点であり、現在研究開発のメンバーとして3名が働いています。

この研究拠点は、研究業務に加え産学連携の分野にも力を入れており、長崎県の大学との共同研究に向けた取り組みやインターンシップの企画/運営、企業説明会なども実施しています。

株式会社ゼンリンに入社した理由

出身が北九州市で、ゼンリンという企業が身近だったことが1番の理由です。
もともと祖父母が役所で働いており、自分が幼いころから、家にゼンリンの住宅地図があったということも、ゼンリンという名前が気になった理由の1つです。

当時は大学院への進学も検討しましたが、早く社会に出て働きたいという思いと、何か変わった事業をやっている企業で働きたいという思いから、最終的にゼンリンへの就職を選びました。

現在の仕事と役割

▼ 役割

長崎R&Dブランチのリーダー。

AIを用いた地図作りの自動化を目指し、AIに関する知識習得、国際学会などの論文調査、AIの実用化を目指した地図作りの工程設計などを担当しています。

ゼンリンでは、昔から様々な用途に向けた地図データを作成しています。例えば、住宅地図データを作成するための情報(出典データ)は、全国各地の調査員が、一軒一軒の表札、住所、建物形状などを徒歩調査によって収集しており、その出典データをもとに地図のデータベースを作成・更新するといった作業を日々行っています。

また、カーナビゲ―ション用や自動運転用の地図データの作成においては車両をもちいた調査も実施しており、自社開発した計測車両を用いて、全国の高速道路・一般道路、裏道までを網羅的に走行し、全方位画像やレーザー点群情報などを収集し、地図作りを行っています。

信頼性の高い正確な地図を作成するためには、大勢の人員をさいて、日々集まってくる大量のデータを確認し、地図データベースの作成・更新を行うことが必要となります。
例えば、交差点1つをとっても、ただ交差点があるという情報だけを登録するのではなく、交差点の名称、信号機と車線・停止線の関係性、交差点での直進・右左折時の車線のつながり、時間帯別の通行可否など、様々な情報をデータ化しております。

これに加え、地図にはメンテナンスが必須であり、如何に効率的にデータ更新のサイクルを回すかが重要となります。そのため、このようなデータ化の業務プロセスをできるだけ自動化させることが求められています。

そこで、ゼンリンの研究開発室では、AIによる地図作りの自動化・更新を大きな研究テーマとして掲げています。

例えば、計測車両で収集した画像データから、標識や信号機など道路に付随する様々な物体を自動的に抽出し、さらに、レーザー点群情報を用いて各物体を3Dオブジェクト化するというものです。

現在、長崎R&Dブランチでは、道路上の物体に掲載されている文字情報(例えば、進入禁止の標識の時間帯など)に着目した情報抽出を1つのテーマとしております。今後は、商業施設の名前や営業時間など、さらには、駐車場の空き状況などリアルタイム性のある文字情報まで抽出することを想定しており、地図情報のさらなる高度化を目標としております。

画像上に写る物体や文字列を検出・抽出するためには、ディープラーニングにより作成したAIを用いています。

ターゲットとしている文字情報は、地域によって表記方法が違うことや、そもそも日本語の表記は種類が多い(ひらがな、カタカナ、漢字など)ことから、どんな文字も正しく検出し、認識できるAIが求められます。

特に、地図というものは間違った情報を掲載することはあってはならない、非常に厳しい品質基準を維持しなければなりません。例えば天気予報、株価予測、商品のレコメンドなど、一般的なAIは多少の予測誤りも許容されますが、地図の場合はそうはいきません。AIに極めて高い正確性・説明性が求められることがこの仕事の特徴です。

ゼンリンは地図業界のトップを走る企業であり、全国各地の様々なデータを保有しています。正確なAIを作成するためには学習に用いるデータが非常に大事であるため、このような研究は、データを持っている「ゼンリンしかできない」仕事であると考えており、とてもやりがいを感じています。

特に、研究部門は若手社員が多く、若手ならではの柔軟な発想が期待されています。研究という仕事の特性上、仕事の進め方に自由度があり、やるべき仕事プラス、自分の興味のある分野の情報収集や情報発信など、いろいろなことにチャレンジできることも魅力の1つです。

このような研究業務の他にも、産学連携業務も担当しており、共同研究に向けた取り組みや、長崎大学 情報データ科学部主催の実社会課題解決プロジェクトへの参加、インターンシップの企画/運営、企業説明会への参加なども担当しています。

▼ 仕事に必要な知識・スキル

仕事に必要な知識は、地図に関する知識全般や、AIや機械学習の知識です。また3D高精度地図データの仕様設計時は、道路交通法や標識設置基準などの知識も習得しました。

但し、知識を身に付ければ良いというわけではなく、矛盾のない仕様設計を行うために重要となる論理的思考や、社内外との仕様調整ではコミュニケーションスキルもとても重要となってきます。

▼ 仕事に対する考え(想いやこだわり)

・地図会社としての心掛け
地図という特殊なコンテンツを扱う仕事ですが、ゼンリンの技術というものは幅広く、「地図を作る技術」と「地図を利用する技術」があります。

私は「地図を作る技術」の中でも主に地図の仕様設計(ルール作り)というものを担当していましたが、どのように地図が使われていくのかをイメージできないと、設計という業務を進めることはできません。

そのため、お客様(例:カーメーカー)が地図をどのように使い、どのようなことを実現したいのか(例:自動運転の車両をこのように制御したい)という点を聞き出し、それがどのようにして世の中で役に立つのかを日々意識しながら、業務に臨んでいました。

・社会人全般としての心掛け
企業での仕事は決して1人ではできないため、チームのメンバー(上司や先輩後輩)と連携し、周囲を巻き込んで進めることが大切だと考えています。そのためには、まず自分の考えを簡潔明瞭に伝えることが非常に重要であり、認識のずれが生じてないかを定期的に確認し合うことを意識しています。

ちなみに長崎R&Dブランチは長崎港周辺のベイエリアを楽しめる出島ワーフの目の前。ランチタイムにチームメンバーで訪れ、リラックスしたひと時を過ごしています。こういったコミュニケーションが良いチーム作りに繋がっていると思ってます。

情報データ科学部生にオススメする学びとは?

①人工知能/パターン認識と機械学習
人工知能(AI)や機械学習に関する講義は私が学生時代にはまだありませんでしたが、間違いなく今後技術に関わる職種に就くのであれば必須となる知識です。詳細な仕組みなどは企業に入ってからでもよいですが、「AIで何ができて、何ができないのか」などといった大まかな概要は抑えておくべきだと思います。

②データベース
ゼンリンの地図データは、様々な種類のデータベースで管理されているため、RDB(リレーショナルデータベース)やSQLの基本的な知識は身に付けておいたほうがよいです。

③ソフトウェア工学
ウォーターフォールやアジャイルなどの開発プロセスの概要は知っておくべきです。企業においては、各工程に対して部署やチームが割り振られる場合が多いため、自分の担当している工程がプロジェクト全体のどこに該当していて、今後どういうプロセスを経て、製品となっていくのかを把握しておく必要あります。


学生の皆さんからは、「学生時代にどんなことをやっておけばいいですか?」という質問をよく頂きますが、「絶対にこれをやっておいたほうがいい!」というものは私個人としてはありません。

但し、学生の皆さんには、いまある時間というものは有効に活用して頂きたいと思っています。それは大学の講義だけでなく、サークルや課外活動、アルバイトなどいろいろなことに対して、真剣に打ち込んでほしいという意味です。

また、社会に出ると必然的に学ばないといけないこと、自ら学びたいと思うことが増えてきますが、時間というものは増えません。学生の皆さんも忙しい日々を送っているかと思いますが、自分でコントロールできる時間というものは少なからず社会人よりは多いはずです。

その時間を勉強に費やすも良し、自分の趣味に費やすも良しだと思っています。
「あのとき、あれをやることできたなぁ・・・」と後悔が生まれぬよう、いま与えられている大学という素晴らしい環境を上手く利用し、自らの成長へと繋げてください。

参考)【就活キラリ★ゼンリン】注目の誘致企業の気になる事業内容に迫る!
https://www.youtube.com/watch?v=VhdzqHmYY9c

(インタビュー日:2022年2月2日)